成瀬は天下を取りにいく
以下、作品のネタバレが少しだけあります。
西武百貨店が開業したころのことはよく覚えています。
高校生だったある日、情報通の友だちが「大津にデパートができるらしい」といち早くビッグニュースを披露してくれ、当時、土曜日の午後(まだ土曜日は午前中だけ授業あり)は京阪電車で京都まで出るのがルーティンだった女子高生は舞い上がったものでした。
その後、情報どおり西武百貨店の建設が始まり、建物の周囲に足場が組まれると、その中の様子を何とか見られないものかと思ったこと、高いところでクレーンが作業する様子にワクワクしたものでした。
そして開業、なんと言っても駐車場の外階段が恐竜の形になっていて、おしゃれなことをやるなあと感動したのを覚えています。
これは本の中表紙、ね、恐竜の首が並んでいるでしょ?
さて、前置きが長くなりました。
この西武大津店が閉店するところから始まる『成瀬は天下を取りにいく』をやっと読みました。
本を貸してくれたのは職場の同僚で、うちのう~じんくらいの年代の人です。
「世間でやいやい言われているほど・・・」
「待って、その先は言わんといて」
これが、わたしら世代にはドンピシャな内容で、6階のバードパラダイスから7階の喫茶ミレー、道を挟んだ反対側の馬場公園まで、懐かしさで胸が熱くなりました。
何と言っても、ときめき坂は今もわたしの通勤経路です。
この小説が本屋大賞をとってすぐ、最寄りのJR膳所駅構内には大きな看板が上がりました。
ファンの人が写真を撮る様子、駅前で聖地巡礼する人が地図を持ってキョロキョロする様子が見られました。
成瀬のブレない生き方を知るにつけ、槇原敬之の曲にあるように『好きなものは好き!と言える気持ち抱きしめてたい』と言うフレーズを思い出しました。
そうだ、自分の信じた道を行くなどという大げさなことじゃなくても、他人の言動に惑わされることなく、自分は自分でいいんだと改めて思ったりして、いやはや少し熱くなりました。
成瀬、ありがとう。
200歳まで生きて大津にデパートを作っておくれ。
ある日の朝ごはん、読んだ人にはわかる。
| 固定リンク
コメント