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2013年10月14日 (月)

そして父になる

『そして父になる』

「病院での新生児の取り違え、過去の例では、早いうちに交換されてます」
そんな簡単なハナシではない。
「犬や猫みたいに・・・」
「犬や猫だってそんな簡単に交換しないわよっ」

Img_00_2

これは、こどもを交換するという前提で、両方の家族が交流を深めるため河原で遊んだあと、記念写真を撮るシーンです。
映画を見たあとでは、それぞれの人物像がよく表れている写真だとわかります。
こどもたちの不安と困惑の表情、感心させられました。

福山演じるエリート父は、人生負け知らずのちょっと非情な男に描かれています。
対照的に、写真の服装を見ても分かるように、リリーさん演じる電気屋の大将はおおらかそのものです。
福山父が揺れて悩んで“父になる”過程が丁寧に描かれていますが、リリーさん父の気持ちがわかりにくく、つまりおおらかだけど優柔不断なのか、時間をかけようとしているのか・・・、はっきりと立場を表明しないあたり、この人はどんな“父になる”のか想像の余地が大有りでした。

こどもたちが泣いたり交換されることを嫌がったりするシーンはなくて、大人たちの間で不安な気持ちを抱えながら、おとなしく大人の指示に従います。
ここらへん、こどもの気持ちはちょっと置き去り。
しかし、ところどころでハッとする言葉・表情を見せてくれて、それに泣かされました。

血を分けた自分のこどもと、6年間愛情を注いで育てた他人の子、自分ならどうするだろう・・・わからない、結局何が一番いい方法かなんて誰にもわからない。

結論も出ない。

見応えありの秀作でした。

これから見る人、電気屋の次男坊にも注目してみてください。
その演技というか存在が自然すぎて、目が離せませんでした。

この方も書いておられますので、合わせてお楽しみください。

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コメント

9月で閉館になった我が街の映画館、来月末に新装OPEN(?)することになりました。あ~よかった~~(笑)
その時までやってくれてるかな?カンヌ受賞作品だし。期待しよっ

リリーさん、『ぐるりのこと。』でも、似たような?「夫」を演じてましたけど。。見てみたいな!

どーでもイイことですが・・・
二人の息子クン、一人は愛媛県生まれ、もう一人は滋賀県生まれなんですね~

投稿: のりりょん | 2013年10月14日 (月) 18時45分

のりりょんさん
うちらのところでは1週間上映が早まりました。
いつまで上映が続くかはわかりませんが、『風立ちぬ』をまだやってるくらいだから、この作品も長いこと引っ張りそう。

まあ、久々のほぼ満席でした。
席が埋まっているのはちょっとうっとうしいけど、盛況なのはやっぱりうれしいもんです。

リリーさんって、こういうつかみどころのない役がお似合いなんですね。
わたしはじっくり、っていうか、初めて彼の演技を見ました。

>一人は愛媛県生まれ、もう一人は滋賀県生まれ・・・
あら、ほんとだ。
なんだかね、電気店で育った方の子、言葉が関西弁っぽくて、群馬ってこういう言葉使うのかな・・・って思ったものですが、そうだったのね。

また台風が来ますね。
この台風が過ぎたら本格的に秋が来ますか・・・ね。

投稿: れいち | 2013年10月14日 (月) 22時35分

れいちさん
ちょっとご無沙汰しました。
なんだか胃腸が秋バテ気味で、食べたいけど食べられないって、悔しいけど年齢かしら…。

この映画、見応えありましたね。
拙ブログ紹介もありがとうございました。
B男くんのリクエストで見に行ったのですが
B男くんは「男が父になるって過程をよく表していた」と感心していました。
「電気屋」のリリーさんおやじは、もうすでに「父」だったかな…。

>こどもたちが泣いたり交換されることを嫌がったりするシーンはなくて、
そうそう、ここは欲しかったかな。
6歳だったらもっと我が出てきますよね。

>これから見る人、電気屋の次男坊にも注目してみてください。
「やまと」くんでしたっけ。うまかったなあ。
存在感がある子役さん、楽しみだなあ。

あとね、横浜では当たり前に目にするけど高層マンションでの子育て、自由に走り回ってきた子供にはつらいだろうなって実感を込めて思いました。

田舎育ちの大人より


投稿: 秀子 | 2013年10月15日 (火) 18時23分

秀子さん
体調不良ですか?
頑張りすぎ?
無理の効かないビミョーなお年頃なんですから、自分の体調によく耳を傾けてぼちぼち頑張りましょうね、お互い。

さて、この映画を見て、わたしは邦画の素晴らしさを実感しました。
映画はハリウッドとずっと思ってきましたが、邦画の質はぐっと上がってきましたね。

秀子さんも書いておられたように、『自分ならどうするか』と、ストーリーのあちこちでちらちらと思いながら見ましたが、やはりどの場面でも結論は出ませんでした。

終わってからもB男くんと堂々巡りの感想しか出てきませんでした。
でもね、B男くんは
「交換するならする、このままならこのままで、戸籍の問題をクリアせんかったら、将来相続で揉めるぞ」
な~んて実もフタもない方向へ持っていきましたわ(笑)

久々にいい映画を見て、この作品が海外で高評価されたことを誇りに思いましたね。

そうそう・・・
餃子は100個くらい作る我が家では、つたや電気店での晩御飯の餃子の数はツッコミどころでしたわ。

投稿: れいち | 2013年10月15日 (火) 23時00分

最近映画を見ていない ふじ です。

れいちさんの映画評が少し分かった気がする。

この映画の主役は、日本国民の殆どが認めるイケメン。
その容姿にまったく触れないないなんて
本当に素晴らしい内容の映画だったんやね。
まさか、この主役をイケメンと思っていない
なんて、身の程知らずなことを考えている訳ではあるまい。

僕もこの映画、見にいこうかな。
真木よう子も尾野真知子も、僕の大好きな美女やし。

投稿: ふじ | 2013年10月18日 (金) 06時14分

ふじさん
なんだか急に朝晩寒くなりましたね。
こたつが恋しい今日このごろです。

さて、カンヌ映画祭ですが・・・
出品された『そして父になる』『藁の楯』に出演していた福山、大沢たかお、藤原達也の3人が海外で絶賛されたそうです。
背が高くて細くて顔が小さい・・・日本人の体型も変わったものですね。
日本にはこのような男ばっかりだと思われてたらどうしましょう、別に困ることではないんですが・・・。
ま、そこにふじさんが混じっててもなんら遜色ないようにも思います。
え?
これでよかった?

ふじさん、この映画見てください。
福山がオトコマエかどうかなんてどうでもいいくらいに、ストーリーに釘付けですから。

投稿: れいち | 2013年10月19日 (土) 02時03分

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