« 三鷹の森へ | トップページ | 激アツな街・新大久保 »

2011年7月 5日 (火)

文豪の軌跡

Top_dazai_2 

太宰治の小説はもの哀しい。
青森県の裕福な家に生まれ東京帝大へ進みながらも、学生時代から女と一緒に何度も心中を試みるという破滅的な生活を送り、そういう生き方が作品に色濃く表れていると思う。

有名な作品では『走れメロス』『人間失格』『斜陽』など。
そして絶筆となった『桜桃』

男には聡明な妻と3人のこどもがありながら、愛人を作って何日も家を空ける。
飲み屋では桜桃(さくらんぼ)が出される。こどもたちには贅沢はさせていないから、こんな高級な果物を見たこともないだろう、持って帰ったら喜ぶにちがいない、つるをつないで首飾りにしたらかわいいことだろう・・・
そう思いながら次々とまずそうに桜桃を食べる男。

乙女だったわたしは胸が奮えて哀しくて、やりきれない気持ちになったものです。
「あんな悪い男には近寄っちゃいけないよ」
と言われれば余計にその男のことを知りたくなる、そんな存在の作家でした。

結局、太宰は愛人と玉川上水に入水して心中を遂げます、享年38歳。桜並木とアジサイの堤が井の頭公園まで続きます。

Cimg8856
当時は『人喰い川』と呼ばれるほどの水量だったそうですが、現在はわずかにせせらぐ程度の穏やかな川です。
絶命の場所に記念の碑があり・・・

Cimg8900

Cimg8901

また近くには出身地、青森県金木町の天然記念物、玉鹿石という荒削りな感じの石が置かれています。

Cimg8904

「足にマメやら水ぶくれ作って、この石が見たかったん?」
と言う娘に
「すんません、実は、近くにお墓もありますねん」
と言えば、あきらめ顔で付いてきてくれましたが、これがけっこう遠くておまけに急に雨も降り雷も鳴り出す悪天候。素足にサンダルというのはあきませんなぁ、わたしの足も傷テープでは追いつかないくらいの靴ずれが・・・。

太宰は生涯森鴎外を尊敬していて、死後は鴎外と同じ墓地に埋葬されることを望みます。

ここの墓地は清潔で、鴎外の文章の片影がある。こんな清らかな墓地の片隅に埋葬されたら、自分の汚い骨も死後の救いがあるやもしれず。

放蕩生活の末に愛人と心中した小説家は檀家に受け入れられず、住職は慈悲深い心で檀家を説いて鴎外と同じ墓地への埋葬を実現させたということです。

こちらが禅林寺。

Cimg8893

本堂の裏手にある墓地は結構広くて、文豪ふたりのお墓を探すこと10分ほど。

Cimg8899

あった!森鴎外のお墓。
墓所は広くとってありますが、墓石は特別に大きいわけではなくシンプルです。
葉となった桜の木が程よく木陰を作っていて和みます。

Cimg8895
やや斜めに向かい合って建つ太宰のお墓、墓碑は太宰自筆。
隣に夫人の津島美知子の墓、そしてそのまた隣に愛人太田静子の墓(心中した愛人とはまた別)。

Cimg8897

太宰の退廃的な生き方をかっこいいと思った若いころ、わたしは何に憧れていたんだろう。
その作品が、その後の自分の生き方に大きく影響を与えることなく、至極まともに生きてきた年月のなんと早く過ぎたことよ。

太宰の遺体が発見された日は、彼の誕生日でもありました。
絶筆となった『桜桃』にちなんで、誕生日の6月19日には『桜桃忌』法要が営まれ、たくさんのお参りがあるようです。

この日、わたしの行きたいところはこれで終わり、あとはあねこのお買い物に延々3時間ほど付き合ってホテルに戻ると・・・エキストラベッドにう~じんが寝ていました。

|

« 三鷹の森へ | トップページ | 激アツな街・新大久保 »

コメント

こんばんわmist

お暑い夜に太宰、なんて似合っているんでしょうか
(少しでも涼をとりたい気持ちが)
もう少しジメジメ肌寒い方が本当は似合ってますが。

玉川上水は私が生まれ育った近所にも通っていて、
今は蓋をしてしまって遊歩道になっているのですけど・・・

私はまだ太宰の碑、お墓には行ったことないのでとてもお勉強になりました、ありがとうございます。

三鷹市では桜桃忌に合わせるようにして太宰の朗読会を俳優さんを招いて行っているそうです。
いつか行ってみたいんですけどね、遅れて情報を新聞で読むだけなんで・・・

ちなみに小さいウンチク、神田川の源は井の頭池なんですよ~

投稿: あまみつつき | 2011年7月 5日 (火) 23時07分

cameraあまみつつきさん
今回、わたしたちはJR三鷹駅で降りてジブリ美術館まで歩き、美術館を出た後、またもや公園の中を吉祥寺駅まで歩くという、井の頭公園周辺満喫デーでした。
素晴らしい自然ですねぇ。
桜桃忌にふさわしいさくらんぼがぶら下がる道をこどもが自転車に乗る練習をしていたり、ママ友たちがお弁当を広げていたり、わりと手つかずの雰囲気がちょあよ~。

太宰の短編はとても短いものもあり、その短編に生きていく哀しさ、虚しさがいっぱい漂っていて息苦しいくらいです。
俳優さんの朗読、わたしも聴いてみたいです。

それより、次回の上京ではあまみつつきさんにぜひお会いしてみたいです。
あと、関東方面のネッ友さん、みなさんにお会いしてみたい。
集合場所は井の頭公園のボート乗り場、ペーロン対決でいいですね?

投稿: れいち | 2011年7月 5日 (火) 23時52分

れいちさん
「ひらりひらりとお母様がスプーンでスープを飲んでいたのは、「人間失格」だったでしょうか…book

太宰を読んだのは大学生くらいだったか…もう少し早く読んでいたら、心酔してたかもと思いながら読んだ記憶があります。

行こうと思えば行けるのに、ジブリも太宰のお墓も行ったことがありません。森鴎外のお墓もあるとなれば、ちょっといつか行ってみようかな、と思いました。

鴎外のお墓が小さいのは、本人が希望したのですよね。遺言により「森林太郎」とのみ記されているお墓なのですね。

とはいえ、こちらもドイツかた帰国後ドイツ女性が日本へ訪ねてきた事実を考えれば、罪な男たちですなあcatface

追伸:1つ前の「豚さんの絵」は、ブログ本体の写真でなく、トラックバックにある豚ちゃんの絵です。

投稿: 秀子 | 2011年7月 6日 (水) 00時34分

camera秀子さん
>「ひらりひらりとお母様がスプーンでスープを飲んでいたのは、「人間失格」だったでしょうか…。
わたしが太宰に傾倒していたのは花も恥じらう乙女のころのことですので、内容については詳しく覚えていませんが、文面の感じからでは『斜陽』でもおかしくないかな、と思います。

風の散歩道には山本有三記念館と言うのもありまして、なかなか瀟洒な建物で、文豪たちの軌跡が揃っている素敵な街でした。

森林太郎のお墓のエピソード、そうなんですか・・・
よくご存じで。
こちら本名の墓碑、太宰はペンネームで、小さいけれどどちらも趣のあるお墓でした。

豚ちゃんの絵文字が挿入できないってことでしょうか?
実は、わたしもOSが7になって急に絵文字の下2列が挿入できなくなりました。
ココログに質問してみましたが、回復には初期化すれすれみたいな手続きが必要なのであきらめました。
わたしもこの旅では、さくらんぼや豚ちゃんを使いたいのに使えなくてさびしい思いをしています。
ご迷惑をおかけしてすみません。
今度お会いすることになったら本物のれいち豚をお目にかけますのでお楽しみにhappy01

投稿: れいち | 2011年7月 6日 (水) 18時20分

こんばんは。
>わたしもOSが7になって急に絵文字の下2列が挿入できなくなりました。

わたし(pcXP)も、いつぞやから下1列pigが挿入しにくくなりましたsweat01(コツが要る?)
『桜桃忌』cherry(2列目はOK)で検索したら・・・
なーんと、トラキチの小学校時代の同級生の名前を発見eye
現在某大学院生で、大学に入ってから太宰に傾倒し、
毎年6月19日には欠かさずお墓参りしているそうな。
あ~ビックリしたsign03
・・・まぁ、のめり込むってのもなんとなく分かるような。
小学生らしくない?一風変わったお子でしたわbleah

話全然ちがうけど・・・
reiさんmovie『アンダルシア』もう観た?
私今日観ましたけど、面白かったよーnote
『アマルフィ』の時って確か、う~ちゃん留学前やったよね。

投稿: のりりょん | 2011年7月 6日 (水) 19時10分

pigcherryVistaちゃんの私、
さくらんぼと豚ちゃんを心おきなく使ってみます。(笑)

ひらりひらりとスプーンのスープは
「斜陽」かな?
その昔深夜番組で「文学と云フ事」という
傑作があったのですが、
女優の緒川たまきさんがすごくそれらしいかんじで
演じていたの、覚えております。

太宰さんにはハマりませんでしたが
「カルモチン」飲んで死のうと思ったのに
「ヘノモチン」(下剤)飲んじゃったという
「人間失格」のラストが妙に脳裏に
こびりついております。
ふふっ・・・と口元で笑ってしまうオチ、だったんでありましょうかね。

太宰さんがお金持ちのぼんだった高校時代に
金かけてつくった「同人誌」が
「なんでも鑑定団」に出て高値でしたが
高校生のぼんの同人誌が
「ガリ版」とか「大学ノート」でなかったのに
ちょっとむっとしつつ(笑)
表紙の絵の(自作)完成度とセンスには
やはり天才、と恐れ入りました。

人間ドコにどんなふうに生まれ育っても
幸せと思える人は幸せで、
どこか居心地の悪いひとは死ぬまでそのことを
考えるもんなんでしょうねえ・・・(遠い目)

ちょっと真面目になってしまいました。

ワタクシもたくさん歩く時の
「素足にサンダル」気をつけます。
ところで、お墓で蚊に喰われませんでした~?

投稿: miyuki | 2011年7月 6日 (水) 21時13分

cameraのりりょんさん
7では下2列が表示されない、XPでは下1列がだめ、vistaではなんの問題もない。
わたしがmiyukiさんところへコメントするときには全部挿入できます。
これって、こちらへお見えになる方々のモンダイじゃなくて、ホストのわたしのPCのせいなんでしょうかねぇ・・・
みなさん、すみません、ご迷惑をおかけしまして。

桜桃忌、毎年ニュースで話題になるたびに、へぇ~っと眺めているだけですが、トラきっちゃんの同級生が?名前が出るくらいだからただのお参りじゃなくて、主催者側にでも回っているのでしょうか?

う~ん・・・
悩める大学生のココロに染みいると思いますよ。

アンダルシア、観ていません。
B男くんに誘われているのだけれど、最近観た邦画はコケ作続きで、腰があがらんかったの。
でも、おもしろいの?
B男くんにつきあってあげるとするか。
O田裕二、最近ぐっと老け顔になったような気がするのはわたしだけ?

投稿: れいち | 2011年7月 6日 (水) 23時00分

cameramiyukiさん
あ、豚にさくらんぼだ!←なんか新しい格言みたい、意味は・・・世の中には難なく入れる人と、苦労しても入れない人がいる、みたいな。

没落していく華族のおたあさまがひらりひらりとスープをお飲みになる場面、見たかったとです。
最近じゃ『人間失格』で、あの!石原さとみが!!濡れ場を!!!演じたとか・・・
濡れ場がどうこういう作品じゃないと思うんですけど、若い人たちにも親しんでもらうという狙いならばいたしかたなし、か。

太宰は、その死が、作品の完成度を高めましたね。
わたし、若いうちに通過してよかった、はしかのようなもんだわね。

雨上がりの墓地でしたが、蚊は気になりませんでした。
たぶん墓地の端から境内に抜けると近道になるらしく、高校生が次々と歩いていました。
たまにサラリーマンもショートカット。

サンダルの足の裏にあたる部分にブランドのタグが縫い付けてあって、それが痛くて痛くて、足の皮のけっこう分厚い部分に水ぶくれができ、つま先の爪と肉の境目あたりがサンダルの布で擦れて・・・ああ、痛かった。
三鷹の駅前の100均ショップでハサミを買ってタグを切り取りました。
「東京まで来て100均でハサミ買ってまでお墓に行きたいの?」
との指摘を受けました。
このあと、あねこが靴屋さんで試し履きするときにひざ下ストッキングをいただいたから、それをわたしが履いてたんですが、ストッキング1枚で擦れ方が全然違いました。

しかし、やっぱ、格好ばっかり気にしてないで、スニーカーですかなshoe

投稿: れいち | 2011年7月 6日 (水) 23時52分

初めて書かされた読書感想文が 「走れメロス」 ふじ です。

東京旅の続編。
てっきり、お洒落と勘違いした思い込み日記になるのかと思いきや・・
太宰治を偲びながらのお墓巡りって
あぁ、なんて渋いの れいちさん。
少し尊敬するでぇ~。

でも、よく娘さん達がつき合ってくれたねぇ。
娘さん達のお母さんを想う気持ちに
れいちさんの渋さ以上に感動したよ。

ちなみに僕は・・・
はははっ
太宰は、「走れメロス」しか読んだ事がありましぇ~~ん。
それも、小学校の教科書で。

投稿: ふじ | 2011年7月 8日 (金) 00時22分

cameraふじさん
『走れエロス』もとい!『走れメロス』は健全な作品でしたねぇ。
感想文は「友を信じることの大切さ、友情の美しさに感動ししました」で締めくくりましたか?
あはは・・・
まるで見たかのようですか?
わたしもきっとそう書いたからですよ。

こういうシブい観光に付き合ってくれるのは長女だけです、次女はこのとき企業の面接を受けていました。
たとえヒマでも絶対に付き合ってはくれません。

>てっきり、お洒落と勘違いした思い込み日記・・・
うふふ・・・
この日、原宿には行きましたよ。
お祭りかと間違うくらいの人出でした。
そして、わたしくらいの年代の人は・・・数えるくらいしかいませんでした。

翌日はまたミーハーなれいちさんに戻っているので、ぜひお越しくださいねpencil

投稿: れいち | 2011年7月 8日 (金) 22時05分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/165468/40630677

この記事へのトラックバック一覧です: 文豪の軌跡:

« 三鷹の森へ | トップページ | 激アツな街・新大久保 »