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2010年6月16日 (水)

映画『クロッシング』に号泣

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韓国映画『クロッシング』
北朝鮮の炭鉱の町に住む三人家族。
炭鉱で働く元サッカー選手のヨンスは、妻・ヨンハと11歳の一人息子のジュニとともに、貧しいけれど幸せに暮らしていた。
しかしある日、ヨンハが肺結核で倒れてしまう。北朝鮮では風邪薬を入手するのも難しく、ヨンスは薬を手に入れるため、危険を顧みず中国に渡ることを決意する。
決死の覚悟で国境を越え身を隠しながら、薬を得るために働くヨンス。脱北者は発見されれば容赦なく強制送還され、それは死をも意味していた。
その頃北朝鮮では、夫の帰りを待ちわびていたヨンハがひっそりと息を引き取る。
孤児となったジュニは、父との再会を信じ国境の川を目指す。
しかし、無残にも強制収容所に入れられてしまう…。

中国へ渡った父ヨンスは、脱北者支援団体の庇護のもと、自分の意思とは別に韓国へ送られますが、そこでも必死で働き、ブローカーを通じて収容所から息子を救い出す手はずを整えます。息子との約束だったサッカーボールと運動靴も買って。

さて、収容所に入った息子ジュニの方にも次々と試練が襲ってきます。
この息子役の少年、演技なのか素なのかわからない演技、ドキュメンタリーかと思わせる演技にすっかり肝を抜かれてしまい、わたしはダダ泣きでした。
わたしだけじゃなく、館内すすり泣きのるつぼでした。

Photo
母の亡骸を積んで走り去る車、父との約束『おんまを守る』ため「連れて行かないで」と叫びながら追いかけるジュニ。

3
「あぼじ、ごめんね、おんまを守るって約束を果たせなくて・・・」電話の向こうの父は「いいんだよ、もういいんだ」と声を殺して忍び泣き。

2
約束を果たせなかったのは父も同じ。

息子は「雨が好き」と言います。
父とサッカー遊びに興じているときも、雨粒が落ちてくると生き生きします。
ラスト近く、モンゴルの砂漠で横たわる息子の頬に落ちてきた一粒の雨、空には満点の星が輝いているのに・・・
そして、雨は悲嘆に暮れる父の背中にも落ちてきて・・・
このあたりの演出は、悲しくも美しい。
そして美しくも厳しい結末。

苦しい映画でした。
監督は実際の脱北者100人余りに取材したというだけあって、数ある残酷な描写はリアル、おそらく真実に近いものと思われます。
また、テーマが政治色の濃いものなので、北に友好的な中国やモンゴルでの撮影は非常に慎重に行われたのこと。

半島の南北国家の関係は最近また緊張を孕んでいますが、国と国との摩擦はかの国の飢餓にあえぐ庶民にはなんら関係ないということ、フィクションとは言え、この作品で描かれている世界は限りなく現実に近いということを、少しでも多くの人に知ってほしいと思いました。

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コメント

れいちさん、ご覧になったんですのね。
この映画の淡々と進行するゆえに
却ってずんずん刺さってくること・・・
無力感、やるせなさ、しかし見てしまった感(涙)

おととしソウルで公開されたばかりの時に
字幕なしで見て、そのあと東京国際映画祭で
もう一回見ました。
つらい映画なのに、セリフの中身が知りたくて。
あのお父さんのこれからの人生が気になりますよね。
れいちさんとこの映画のことが語れて
ウレシイであります。(ウレシイってのは
適切じゃないかもですがね。)

投稿: miyuki | 2010年6月17日 (木) 02時21分

miyukiさん
映画館を出たら明るい空、にぎやかな町、溢れかえる食べもの・・・
ああ、これ、ジュニに食べさせてやりたい。
ああ、これ、ジュニに着せてやりたい。
この風景をジュニが見たらどう思うだろう。
あれ?
なんか間違った見方をしましたか?わたし。
でも、動物、こどもの演技に弱いのはわたしも一緒。
ジュニ役の坊や、静かにがんばりましたね。

さて、果たしてわたしたちはどうしたらいいんだろう、何ができるだろうって考えました。
答えなんて出やしない。
でも、せめて多くの人に見てほしいものです。

某所でも話題になっていた犬、最初からなにやら嫌な予感がしてましたら、やっぱり・・・
でも赤いほうがおいしいんだよね、あっ禁句

インピョさん、日ごろのスタイリッシュな雰囲気をかなぐり捨てての熱演でした。
コメディもできるし、この方、今後がとても楽しみです。

いい映画を奨めていただいてありがとうございました。

投稿: れいち | 2010年6月17日 (木) 23時32分

遅くなりましたが・・・
実はreiさんより先に私も見ましたよ
勿論、先日miyukiさんがご紹介されていたので知りました。

最近この国の生活ぶりなどの報道はあまりありませんが、相変わらずなんでしょうか。
軍事的にはいろいろやらかしてくれてますが。

映画の影響もあってか
「奪還」蓮池透著読みました。
報道にでてこなくて忘れてしまいがちですが、まだまだたくさんの人たちが消息をたったままで、家族会の方達は毎日毎日運動を続けておられるんだということを忘れてはいけないと思いましたよ。

投稿: bonn | 2010年6月21日 (月) 10時08分

こういう映画は苦手な ふじ です。

「クロッシング」
一部の映画ファンの中で話題になっていた映画やね。
見てないけど、その噂だけは聞いていたよ。
北朝鮮の問題を、リアルに描き出した硬派な映画だって。

なになに?
凄ぉ~く美人な奥さんが出てくるんだね。
その奥さん、病弱で死んじゃうの?
そして、旦那と息子が主人公やね。
彼らはピュアで、凄く健気なんだね。
いろんな試練に対しても、前向きに頑張るんや。
その息子も、最後に・・

アカン、こおいう映画は苦手や。
もし、DVDが出たら誰も見ていないところで、一人こっそり見よぉ~っと。

ところで、れいちさん。
その号泣した涙に、ハンカチ差し出してくれる人
まわりにいなかったのかな?

投稿: ふじ | 2010年6月21日 (月) 10時10分

bonnちゃん
あらまっ!
見てたのね~

ただ今、サッカーの北朝鮮vsポルトガルを見ていましたら、大方の予想を裏切ってポルトガルが苦戦していました。
ロナウド狙いで見始めましたが、あの映画の後ですから、北の選手にもエールを送っています。
国民一人ひとりには罪がないんですものね。
偏った主張もすべて国策のなせるところ、がんばれ~

蓮池さんのお兄さんの著書ですね?
弟さんは、ここでもずっと前に紹介した映画の原作本を翻訳されたときに、ブログを持っておられたんです。
それはちょっと厳粛な感じでしたが、なかなか興味深い内容でした。
前代未聞の国家犯罪、日にちが経つとついつい怒りも遠のきがちになりますが、決して忘れてはいけないですよね。
とりあえず、横田めぐみさんのご両親が健在なうちにめぐみさんを帰してあげてほしいと切に願います。

投稿: れいち | 2010年6月21日 (月) 21時32分

ふじさん
「韓国もん、ようそんだけ見るもんがあるなあ」
とあきれているB男くんがこの映画知ってました。
B男くんの大好きな日曜午後のTV番組『たかじんの・・・』で勝谷誠彦さんがおススメしてらしたということです。
そして、この辺では京都みなみ会館でしか上映がなくて、土曜日その勝谷さんが来館されたそうです。

個人の脱北を主に、かの国の現実を掘り下げた作品ではあるのですけど、純粋に暗くて辛くて悲しい画面に釘付けになるだけでもいいと思います。
ぜひ見てください。

行列ができていたとはいえ、館内はがら~んとしてまして、隣には誰もいませんでしたから、れいち、思い切りきれいな涙を流しました・・・

投稿: れいち | 2010年6月21日 (月) 21時51分

予備知識満々?レビューがんがん読んで観たせいか、はたまた私の心は汚れまくっているのか?

モンゴルの草原、満天の星空、夕焼け、雨降り・・・映像が美しかったですね~
辛いシーン、グロいシーンもすぐ切り替わるので、ポテトもコーラも大丈夫でしたよ(笑)

今朝の『てっぱん』の方がウルウル来た私です。。


投稿: のりりょん | 2010年11月 4日 (木) 19時01分

のりりょんさん
な~んでぇ~~~?
泣けんかった?
やっぱり人それぞれのツボがあるから、芸術とか表現っておもしろいのねぇ。
でも限りなく事実に近いフィクションってことで痛々しいことでしたでしょ?

わたしはラストシーンで『タイフーン』のラストがクロスしました。
ドラマで言うと『サンドゥ学校へ行こう』とか、いわゆるまぼろしを見せるって手法、正視できないんですわ。(サンドゥ・・は、あとでまぼろしだと知って愕然とした)
しかも『クロッシング』はけっこうそのシーンが長くて、あの幸福感と対照的な現実の悲惨さを浮かび上がらせようと狙ったのかすら・・・。
とにかく、上映館も少なくて、チャ・インピョさん以外は地味な配役だったけど、秀作でしたね。

『ゲゲゲ・・・』の流れで次の『てっぱん』も欠かさず見てます、うちのオット。
なかなか考えさせられる、などと申しておりますわ。

投稿: れいち | 2010年11月 4日 (木) 22時45分

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