おめでとう!『おくりびと』
日本の映画賞を総なめにした映画“おくりびと”がアメリカ映画界最大の祭典、第81回アカデミー賞の外国語映画賞に選ばれました。
公開当時、厳かな感動をもって見終えた作品だったのに、鑑賞記を書くこともなく今日にいたってしまったことをちょっと後悔しながら、今日、現地で受賞の喜びに沸く関係者の方々に心から拍手を送ります。
楽団の解散でチェロ奏者の夢をあきらめ、故郷の山形に帰ってきた大悟(本木雅弘)は好条件の求人広告を見つける。面接に向かうと社長の佐々木(山崎努)に即採用されるが、業務内容は遺体を棺に収める仕事。当初は戸惑っていた大悟だったが、さまざまな境遇の別れと向き合ううちに、納棺師の仕事に誇りを見いだしてゆく。
失礼だけれどわたしは、“納棺師”という分野の仕事があることさえ知りませんでした。 3年前に亡くなった姑のときは、葬儀屋の方が湯灌、着替え、化粧など全部やってくれました。「六文銭は三途の川の渡し賃です」と説明しながら銭の絵の書いた紙を入れた袋を持たせ、痩せて硬くなった足には「足袋と草鞋は添えるだけにいたしましょうね」などとわたしたち遺族のものが納得するように語りながら・・・。 まだ30代前半の男性でしたが、無駄のない手順と篤い接し方に感心したものでした。
映画は納棺師の所作がとても美しく、丁寧に描かれています。雪をかぶった山形の山並みと相まって清廉で厳しく・・・。 この厳しい山並みは、都会を逃れて故郷に帰って来ざるを得なかった大悟の背景にいつもあり、ときに彼を寄せ付けなかったり、やがて包み込んだりと、彼を取り巻く人々の象徴のように映ります、きれいです。 主役の本木雅弘くん、自ら作品選びに関わったというだけあって意欲的な、しかし静かなとてもいい演技でした。
死者を冥土へ送る儀式はそれぞれの国や宗教によって様々に違うものでしょう。ともすれば忌み嫌われがちな“死”を扱いながらも、ときに美しく、ときにユーモラスに表現されたものが作品として高評価を受けると同時に、受賞の趣旨からはややはずれますが、日本人の葬送の文化がこのような形で世界に紹介されたのはとても嬉しいことです。
改めて、おめでとうございました。
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コメント
「社会問題や国際問題の深刻さに向き合う気力を
アメリカ人は今無くしつつある。
そこがこの癒しがテーマになった作品が受賞した要因」
とある新聞記事を読み、
なるほど、アカデミー賞受賞には作品の力に加えて、
時代の後押し、追い風といった時期的要因も
あるんだなあ・・・と納得しましたです。
私も公開時に見に行き、
原作となった「納棺夫日記」まで読んでしまいました。
昨年もっとも心に残った一編です。
「納棺夫日記」の作者青木新門さんも
本木くんとの交流などインタビューに答えておられて、はあ、この方なのか・・・と見入ってしまいました。
著作権は放棄なさってるんだそうな。
納棺夫日記のメインテーマは作者いわく「宗教」なんですって。
その部分を映画は扱っていないから、と。
でも仕事としての各エピソードは生かされているし
嬉しい、いい仏像が出来たという気持ち、なんですって。
これもすごくナットクでした。
(本の後半はちょっと難しい宗教観の世界なんですよ。)
人生もとっくに折り返しは過ぎちゃったなあ、と
しみじみ思う今日この頃。
いろんなことがもの思われた受賞でした。
世間の皆さんもそうなんでしょうね。
投稿: miyuki | 2009年2月24日 (火) 12時04分
青木氏、「この映画に関しては、著作権は放棄している」ですね。
投稿: miyuki | 2009年2月24日 (火) 15時13分
「すっし~食いね~
」のあのモッくんがねぇ。。

今朝のハナ○で、かつての同胞?ヤッくんと、
めちゃタイムラグのある(笑)且つ、妙に他人行儀?な二人の会話が面白かったデス
私も公開時に観に行きましたが、祖母の一周忌直後だったこともあり、ここ最近観た映画では最も印象に残っています
ができたら、これまたヒットしそう?
「納棺夫日記」・・・注文が殺到しているそうですね。
「『おくりびと』が出来るまで」なんてサイドストーリー
『Departure』ってタイトル(洋題?)
イイなぁ~って思いました
投稿: のりりょん | 2009年2月24日 (火) 18時15分
こんばんは。^^
『おくりびと』見てなくて・・・恥ずかしながら、「納棺師」って言葉も知らなかったんですが・・・^^;
本当に快挙ですよね!!あのアカデミー賞で日本人が二人もスピーチするなんて!拍手拍手です。
余談ですが・・・
)
大スターの今が見られるので、アカデミーの授賞式
見るの好きなんです。^^
今年は特に大物さんがプレゼンターで見応えありました。
確実と思ってたけれど、ヒース・レジャーが助演もらったのも良かった。これで彼はアカデミーの中で永遠に生き続ける・・・(アカデミーはこんなん好きだもんね・・・
投稿: みつこ | 2009年2月24日 (火) 22時19分
静かな感動でしたね。
生き別れの父親が亡くなって登場したあたりで結末のまとめ方を予想してしまう、しょうもないわたしでしたが、後味のいい映画でした。
この後味、サムライスピリッツを誇る日本人は“残心”とも言ってこだわりますね、えっ?わたしだけ?
原作の青木さん、ひっぱりだこ。
納棺師を養成する専門学校、問い合わせ殺到。
あらあら・・・死後何日も発見されなかったケースもあるのに、そこらへん覚悟はいかに?
ニュースで、この作品が受賞した背景を分析してて、小難しいこと言ってましたが、なんてことない、戦争とか差別とか、社会の大きな矛盾に辟易しての結果でしょう。
これでいいじゃない。
泣いて笑ってしみじみ来たるべき死を想う・・・。
ああ、miyukiさん・・・
折り返しどころか、人生の3/5は過ぎたかな、わたし。
なのにこんななんの覚悟もできてないおばさんって
投稿: れいち | 2009年2月24日 (火) 22時58分
はな○に薬○くんともっくんが出ていたの?
あっ、衛星電話とかでインタビューか。
本当にねぇ、スシ食いねぇ・・・って歌ってた子が。


いつぞやの紅白では近藤ムをぶら下げてたっけ・・
@ @
ё ←こんなふうに
『シコふんじゃった』はご覧になりました?
きれいな胸筋を惜しげもなくさらしてくれるというおまけ付きで秀作でした。
うちの姑のとき、火葬場で帽子を取って頭を下げてくれた係のおじさん、帽子の下にももうひとつかぶってたのが浮いてて、わたしと娘たち吹きそうになり慌てました。
あとでB男くんも「落ちるんじゃないか」って心配で心配で笑えてきたって、おいおい、喪主でしょうが!!
『Departure』
滝田監督が受賞のスピーチでうまいこと絡めてましたね。
投稿: れいち | 2009年2月24日 (火) 23時24分
今夜のニュースでは、あちこちの映画館で記念上映やってて、たくさんの行列ができていました。
もっくんがね、チェロを弾くんです。
オーケストラで、家で、河原で・・・
この河原で弾く場面がとってもきれいです。
チェロの音色もお腹に響きますし。
すごく練習したそうです、このへんもぜひ見てくださいね。
授賞式、わたしはハイライトを見ただけで、他の受賞作品もよく知りませんが、ヒース・レジャーが助演賞ですか、おめでとうございます。
ちょっと変わった役が続いてて、次も見てみたかったですよね、つくづく残念です。
投稿: れいち | 2009年2月24日 (火) 23時41分
普段ほとんど映画を観ないのに、たまたま空いた時間とピッタリだったので、内容を知らないまま俳優さんの顔ぶれだけで封切早々に見ました。
それが、こんなに湧かせてくれるなんて
山形だったっけ?
川原でモックンがチェロを弾く場面。。。一昨年見送った父との日々なども思い出し、本当にうっとりしました。
チェロってこんな素適だったんだぁ
モックン自らが弾いてたの?
あのCDも売れているそうな。
買わねば!
たぶん映画の影響だと思うけれど、去年暮れに新聞でエンバーマーのことが紹介されてました。
その直後に親戚のおじさんが亡くなられて、なんとエンバーミングを施されていたんですよ
本当に綺麗でした。
まるで生きておられるようで、すばらしいと思ったけど・・・
賛否両論あるかなあと・・・遺族の気持ちですよね。
投稿: bonn | 2009年2月25日 (水) 09時49分
>エンバーミング
ってなんなのさ?ってことで調べましたがな。
へえ・・・
レーニンの遺体はずっと、生きているかのように保存されているのは、そういうことだったのね。
うちのおばあちゃん、亡くなったのが7月。
次の日の夜がお通夜でその次の日が告別式でした。
たいしてドライアイスも入ってないし、それも交換している様子はないのに、きれいとまではいかないけど顔色一つ変えずに(当たり前か)特有の匂いもしない・・・
「きっとなにかヤッてるんやね」
「注射一本でできるらしいよ」
などと身内で囁いてたのですが、なにかしてあったのかもしれないです。
もっくんの演奏は見事でしたよね。
ただし、複数の演奏家のチカラを結集して仕上げた音らしいです。
でも実際にも弾いていたよねぇ。
いい音が出ていたかどうかはわからないけど、そこらへんは上手にあとから音をかぶせたんでしょうか。
チェロが弾けるってかっこいいなぁ。
亡くなったいかりや長介さんがベースに陶酔する姿もよかったけれど。
弦楽器を弾くオトコって、素敵だなぁ
投稿: れいち | 2009年2月25日 (水) 18時22分
前から思ってたんだけど
れいちさんが映画についてのコメント残すときは
男性俳優についてのコメントが多くないかい?
れいちさんも女の子なんだなぁ と思うよ。
ちなみに、僕はこの映画は見てないけど
受賞式のニュース見ながら
気がつけば、広末涼子ばかりを見てたよ。
やっぱり僕も男の子か。
はははっ
お互い様だね。
投稿: ふじ | 2009年2月25日 (水) 21時42分
>男性俳優についてのコメントが多くないかい?
あら、そうでしたか?
別に女優を見ていないわけじゃないんですけどねぇ。
ひろ末、いいドレス着てました、お胸もそこそこあったし。
それより遠慮がちにみなさんの後ろに立っていた余貴美子さん、なかなか存在感ありました。ドレス、全体の感じが見たかったな。
余さんの演技もよかったです。
この方、“目”にすごいチカラがあって、葬儀屋の事務員、適役でした。トシ重ねてからいい仕事が回ってきた素敵な女優さんです。
えっ?
ひろ末の演技?
う~ん、ちょっとあざといかな、顔だけで表情を作っている感じが・・・。
もうちょっと抑えても滲み出るものが欲しい(わたし、ナニ様?)
あっ、ふじさんひろ末好きだったらごめんね~o(_ _)oペコッ
投稿: れいち | 2009年2月26日 (木) 01時02分
この作品、父の事が思い出されて、号泣必至なので、DVDで観ようと思ってマス

死装束姿の父を見た時、「こんなの、着たくないだろうな」って・・・
おしゃれなひとでしたから・・・
だから、1番のお気に入りだったコートを掛けてあげました。
一緒に旅行した時に作ったモノなので、手元に置いておきたい
気もしましたが、やっぱり、父と一緒の方がイイと思いマシタ。
B男とはカラダのサイズが違うので、洋服類は着られませんケド、
小物類はぜ~んぶ貰っちゃったので、「コレが似合うよ~な、シブい
オトナのオトコになってよね~」って、ぷれっしゃ~かけてマス
で、>ひろ末、いいドレス着てました、お胸もそこそこあったし。

ステキなドレスで、似合ってじゃないですか~評判ヨカッタみたい
ですし・・・
れいちさんってば、若くてかわいいコには、イジワルなんだからぁ~
投稿: mojo | 2009年2月27日 (金) 23時50分
この映画、テーマからしてシリアスっぽいですが、実は笑える場面もいっぱいあります。
でも、亡くなった方を思い出すに違いないので、やはり自宅でひとりで見たほうがいいでしょう。
>だから、1番のお気に入りだったコートを掛けてあげました・・・
パパはきっと、それでほっとしたことでしょうね。
同じく写真も、喪服の上に顔だけ乗せるのは老人だけのものだな、と思います。
わたし最近、写真はプリントしないでパソに入れッパだから、いざというとき家族は困るだろうな。
パスワードかけてるし・・・。
投稿: れいち | 2009年2月28日 (土) 22時32分