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2008年2月17日 (日)

本当にあった(らしい)怖い話 Ⅱ

69385985_2001028b6a 湖畔に立つそのリゾートホテルは、冬の間の平日にもかかわらず賑わっていた。
関西の古都めぐりを楽しむものや比叡・比良山系でのスキーが目当てのもの、あるいは冬季限定の企画である小グループ向けのお得な宿泊プランでの客などで、ロビーやレストランにはリゾートホテル特有の華やかな雰囲気が漂っていた。

K介は、昼から夜にかけて最上階のレストランでウェイターとして働くアルバイト学生、ホテルの仕事はすでに3年目を迎えた彼は、まじめさと人当たりのよさで上司から気に入られ、やがて宿直勤務のアルバイトまで任されるようになっていた。夜間の仕事と言ったって滅多なことはなく、ほとんど宿直室で仮眠できた上に賄いがつくのでおいしいアルバイトだった。
その日の宿直は若手社員のM田とK介のふたり、すでに何度かコンビを組んでいて気心は知れている。テレビの深夜バラエティを見ながら、午前0時になったら交代で仮眠しようと話していた矢先・・・

客室からの電話が鳴った。
表示板に点灯したのは20階の西側の端、2001号室からの発信を示すランプ。
まただ・・・先ほどもその部屋の泊り客から呼び出しがあって部屋へ出向いたところだった。
「こどもの声がやかましい」
との訴えにM田とK介、それにその部屋の客である中年の夫婦の計4人が部屋で耳をすました。窓の外、湖を渡る風がときおりひゅぅと口笛のような音を立てるだけで他には何も聞こえない。
「思い過ごしかもしれません」
まじめな事務員風の夫と控えめな感じの妻は恐縮した表情で言った。
「また何かありましたら遠慮なく仰ってください」
と言い置いて戻ってきたらすぐさまの呼び出しだ。

「やっぱり・・・どこかでこどもが何人か、きゃあきゃあ言いながら走り回ってうるさいんですよ」
電話口の夫は嘘をついているようには思えない。
2001号室の上は会議室、深夜に会議などあるはずもない。下の階は・・・空いている。東側の隣の部屋2002号室は老夫婦ふたりだけ。西側に客室はない。防犯カメラのモニターを20階の廊下に合わせたが廊下の防犯カメラにも何も映らない。

社員のM田とK輔はマスターキーを持って、再度一緒に2001号室へ行った。
相変わらず夫婦は重ねて苦情を訴えたことに恐縮していたが、先ほどよりもはっきりとした態度で
「今は聞こえませんが、さっきまで確かに聞こえていたんです」
「こどもたちが大きな声で笑いながら部屋を走り抜けて行ったような感じでした」
と言った。
「どちらから聞こえましたか?」
「それが・・・」
夫婦で聞こえる方向が違うと言う。
M田は、『ありえない』という状況を、本人らに直接確かめさせるしかないと判断した。

隣の2002号室のドアをM田がそっとノックした。
やや時間が経ってから老夫婦のうち夫の方がドア越しに訝しげな顔を出した。
「実は、隣の部屋のお客様がこどもの声がやかましいと仰るのですが、こちらではそのようなことでお困りではございませんか?」
「気がつきませんね、入って見ていただいてもいいですよ」
老夫婦の好意に甘えて2001号室の夫婦も入れて確かめさせた。部屋は片付いていて、老夫婦以外には猫一匹もいる気配はない。M田がさり気なく喫茶券を2枚テーブルに置きながら丁重に詫びを言って、4人は2002号室をあとにした。

「上の会議室と・・・下は空き室なんですがご覧になりますか?」
と聞くと夫婦は是非確かめたいと言う。
上の会議室、鍵を開けて明かりをつけて椅子を収納しているスペースまで見せた。がらーんとした会議室は冷え込むばかりで何の異常もない。
続いて下の階の1901号室へ案内した。
ドアを開けると夫婦の部屋と同じ間取りが広がった。部屋中の明かりをつけ、バスルーム、クローゼットすべて開けて見せた。
「だぁれもいるわけないですよねぇ」
ひととおり部屋を歩き回った夫婦は首をかしげるばかりだった。
・・・これで納得してくれるだろう・・・
胸を張って立つM田の隣でK介が何気なくカーテンを開けたら・・・
このホテル自慢のひとつ、湖に面して大きくとった窓に無数の手形がついているのを見つけた。
M田も同じところに気がついたようだった。
・・・あした掃除の係のものに窓拭きを念入りにやるよう言わないといけないな・・・
M田がごくごく小さい声でつぶやきながらカーテンを引こうとする前に、K介が制服の袖でこしこしと手形をこすってみた。
・・・とれない。
窓ガラスの内側はきれいに磨き上げられていたが、その手形は窓の内側ではなく、外側についていたのだ。
窓の中央、大きな面は嵌め込み式で開けることはできない。サイドに開閉式の縦長の窓があるが押しても5センチほど広がるだけで、人の出入りどころか腕を差し出すこともできないしくみになっている。
夫婦はバスルームで排水口や換気口に耳をくっつけていたので、窓の様子に気がついていないのを幸いに早々に部屋から出た。

M田とK介はお互いの顔を見合わせるだけで、交わす言葉もなく震えが来た。
M田がその部屋のドアを閉めるときにK介が照明を消し、ふたりでもう一度窓の方を見たら、慌てて閉めたカーテンが半ば開いており、暗い窓に手形が白く浮かび上がっていた。それは小さいこどもの手形に違いなく、窓の高いところまでべったりと一面花が咲いたようについていたのだった。

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コメント

琵琶湖畔の幽霊ホテル
寂しい子供達が遊び相手を求めて手形を残す。
この話、僕も知ってるよ。

でも、このお話は続きがあるんだよ。
この寂しい子供達、常に誰かに呼んでくれないか待ってるんだって。
だから、この話をすると次の日の夜には・・・

おっと、これ以上話すと ふじの家に来ちゃう。
このお話を始めたのは れいちさん だからね。
だから遊びに行くのはれいちさんの家にしてね。お願いだから。

投稿: ふじ | 2008年2月17日 (日) 21時33分

ふじさん
このこどもたち、別に悪さをするわけじゃないんですよ。
幽霊でもない。
楽しかったホテルにまた遊びに来ただけなんです。

わたしの知り合いの先生のところにも来たって言ってました。
そこんちのこどもさんと一緒になって先生の寝ている枕元をぐるぐる走り回ったそうです。
「夜中に誰が遊びに来ているんだ、ったくやかましい」
と思ったそうです。だ~れも来ていないのに。

言いだしっぺ・・・先ほどまでうちに来てました。
今夜泊まるところを探しているって言ってたので、ふじさんの家のほうを教えておきました。
早く雨戸を全部閉めた方がいいですよ。
あした窓拭きがタイヘンだから・・・。

投稿: れいち | 2008年2月17日 (日) 22時02分

ひえぇ~相も変わらず怖いお話お上手すぎる。(でも、何となくこれは聞いたことがあるような)

しかし、そんなおっとろしい(←富山弁)続きがあるのは知らなんだ。
話をすると来るの?琵琶湖からここまで来たりする?遠いよ‥

投稿: みどちん | 2008年2月17日 (日) 22時08分

こ・こんな時間に読んでしまった・・・

いや~~~ん!{{{{(+_+)}}}}


投稿: ゆかりん♪ | 2008年2月17日 (日) 23時48分

みどちんさん
これ、ほんっとなんだってばぁ・・・。
作ってないです。
ただし、わたしに教えてくれた人が作ってたら別ですけど・・・。
その人、他に芸能裏ねたもたくさん知ってて、すごくおもしろかったのに去年転勤しちゃった。

K介く~ん、ここ読んでる?
文中、間違いがあったら訂正コメントください。

みどちんさんとこは寒いから行かないって。
行っても外で雪遊びしてるわ、きっと。
あした表に雪だるまが作ってあったら、それはこのこたちの仕業だね、きっと。

投稿: れいち | 2008年2月18日 (月) 00時18分

ゆかりん♪さん
夜中に読みに来てくれてありがとうございます。

これは一種の座敷わらしですね。
怖くないですよ。
ただし、今度窓拭くときに気をつけてみてくださいね。
2階の嵌め込み窓の外側に手形が付いてたら・・・ふふふ・・・。

うちの和室の天井には手形が付いていて、年々その形がはっきりしてきます。
これは、無念の最期を遂げた武士の手形でもなんでもなく、大工さんが作業のときに素手で触ったからなんです。
でも、うちの建ってるところは昔、武士の通り道だったところです。
重ねて・・・ふふふ・・・。

投稿: れいち | 2008年2月18日 (月) 00時29分

子供が遊びにくるのは、その人がとってもいい人で遊んでくれる人を狙ってくるんだって聞いたことある。

以前住んでいたハイツでは、テレビが勝手に点いたり消えたり・・・
座敷わらしがテレビを見てたのかなあ。
突然、机の上のボールペンがコロコロと・・・

ほんまやでぇ~

投稿: bonn | 2008年2月18日 (月) 23時21分

bonnちゃん
うちのあねは小さいとき、家の中でひとりで遊ぶのが好きな子で、人形やブロックを並べて独り言を言ってることがよくありました。
人形に話しかけているとばかり思っていましたが、ひょっとしたら座敷わらしさんが来ていて一緒に遊んでいたのかもしれませんねぇ。
「ちょっと待っててね」
「あらあらどうしちゃったの」
ふだん使わない標準語で表情豊かに…誰と話していたのでしょう。

うーじんは仲間がたくさんいて、外で泥んこになって遊んでいましたが、そんなときでも
「だめよ、これは触っちゃだめなの」
などとひとりごちている子がいましたよ。
あれも座敷わらしかぇ。

お宅のテレビは・・・お隣の部屋の住人のリモコン操作が影響したんじゃないんですか?
わたしがPCでDVD見るときリモコンを操作すると、隣で別のDVD見ているあねのPCも動いたり止まったりしますよ。

投稿: れいち | 2008年2月19日 (火) 17時17分

snowみなさ~んsign03
ココログさんのブログで、きょうから絵文字が使えるようになりましたscissors

入力画面の[内容:]の横の顔マークをクリックすると絵文字が出てきます。
カーソルの場所で表示しますので色々使ってみてくださいねlovely

投稿: れいち | 2008年2月19日 (火) 17時24分

以前住んでいたハイツは我家だけ並びから飛び出してまして・・・階下のお宅のリモコンに反応したと・・・?
ボールペンころころは?

姉は中学生の頃、学校からの帰り道に通る公園に、明らか実際の人間でない女の子がときどき座っているのが見えると言ってましたよ。
特に怖がっても無くて「そういうことって他にもあるよ」って言ってました。

次女はあまり見えないそうです。

投稿: bonn | 2008年2月19日 (火) 22時02分

shock怖いお話には、こんな顔文字??
年取ってからは夜お墓の傍を通っても
あまり怖いと思わなくなりましたが、
いきなり脅かされたりするのはやっぱりいやだなあ。
高い窓の外からつけた手形もナンですが、
ありえない高さに浮いてる日本兵とか・・・
うひょおお~~~・・・

私は何か姿が見えたりするような霊感はあまり強くはないようです。カンは働くほうだと思うのですが。
それでも、旅先で眠れない部屋ってのは
何回かあったような。

投稿: miyuki | 2008年2月19日 (火) 22時26分

b・b・bonnちゃ~ん
>明らか人間でない女の子・・・って、うぐっ。
お宅のお姉ちゃん、そういうのが見えるタイプなの?
あの子は優しいから寄ってくるんだろうか・・・

そういえば、前に行ってた美容院のお兄さん、ケーサツの近くの踏み切りのところで、雨の日にはよく遮断機にセーラー服の女の子がふたり腰掛けているのが見えると言ってましたなぁ。
メイとさつきでしょう!?って言っておいたべ。

ボールペンころころは・・・
明らか、お姉ちゃんに遊んで欲しくてボールペンがアピールしているんでしょう!
何にでも神様はおわしますのやshadow

投稿: れいち | 2008年2月19日 (火) 22時32分

miyukiさん
日本兵なんて、ありえない高さに浮いてなくても今の世の中充分怖いですがな。
わたし、日本兵の帽子の後ろについている垂れた部分、陽よけなのかな?あれ、何となく怖いんですわ。
最近、幼稚園の子らが外遊びするときにあのたれが付いたキャップを被っているのを見ると、ぞ~っとしますのや。
おまけにお墓はいくつになっても怖いです。
小さいころは土葬でしたから、ひょえ~~~。

あっsweat01わたしもカンが働く分野があります。
それは・・・大きなお腹の女の人を見ると、産まれてくるのが男の子か女の子かがきら~んとわかるんです、でも奥さんだけ見たんじゃわからなくて、だんなさんも一緒に並んでいると7割以上の確率で当たります。(そんなに自慢できる数字ではないか・・)
自分のときははずしましたけど・・・sweat02

絵文字、もう飽きてきた・・・

投稿: れいち | 2008年2月19日 (火) 23時00分

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