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2007年11月 6日 (火)

私たちの幸せな時間

   *映画『私たちの幸せな時間』に関してネタばれあります、お気をつけて!

人を殺めた罪で死刑を待つ男、心に深い傷を持ち自殺未遂を繰り返す女。生きることになんら執着しないふたりが出会い、やがて心を開き、お互いかけがえのない存在であると気付くまでを描いた韓国映画『私たちの幸せな時間』を観ました。                               原作は韓国の人気作家コン・ジヨン氏のフィクション、蓮池薫さんが翻訳して話題になったものです。

Photo刑務所の教戒師を務める修道女の叔母に連れられ、刑務所の慰問にやってきた元歌手の女ユジョンは、叔母に悪態をつく死刑囚ユンスを見ても動揺することなく笑い飛ばすというザマ。もとより生きることに疲れたユジョンには怖いものなどあるはずもなく、医師のカウンセリングを受けるか、さもなくば刑務所での奉仕活動かという選択がなければ絶対に関わりたくない相手ユンス。過去にもこれからも生きる上で接点のないふたりが、何度か面会を繰り返すうちに自身の秘密を吐き出し、そのあたりから言葉と一緒に心の中の頑ななものが少しずつ溶けて流れだします。                                  木曜日の午前10時から午後1時までの3時間は『私たちの幸せな時間』・・・ふたりにとってはつかの間の安らぎを得る、とても大切な時間。しかし、ユンスに残された生きる時間はあとわずか、死刑執行の日は確実に近づいてきます。

ユンスは言います。「神様は僕の人生の最後にユジョンという天使を遣わされた」と。しかしそれはまたユジョンにとっても同じこと、彼女の前にはユンスに姿を変えた神を遣わされたのかもしれません。                                         ユジョンが15歳から抱えてきた心の傷は、ユンスに告白したことでいくらか軽くなった、でもユンスから手渡されたプラスチックのクルス、それを背負ってユジョンはまた、長く苦しい道を生きていかなくてはならない。その苦しさは今までとはまた異質のもの、桁違いに苦しいもの、たとえそうであっても今度こそ彼女は強く生き抜いていかねばならない。それはユンスとの形のない約束みたいなものだから。                                              決して報われない愛なのに、ふたりの気持ちが徐々に近づいていく様子は切なく、とりわけユンスがユジョンを見つめる目は痛々しくて、ラスト近く一枚の写真の中に見つけた偶然のユジョンと、その下に書き込まれた文字は涙なくして見られませんでした。

何をも寄せ付けない鋭い眼光のユンスが、被害者の遺族の言葉に怯え、泣き、やがてユジョンと心を通わすうちに穏やかな視線になっていく、この過程をカン・ドンウォンが気張らず胸を打つ演技で秀逸。                                                            片やイ・ナヨン、『愛の群像』でのペ・ヨンジュンの妹役から7年、『英語完全征服』ではコミカルな演技で一皮剥けた感があり、ちょっと注目していましたが、今回の退廃的な表情から慟哭の演技まで、次々と新境地を開いていく楽しみな女優さんです。            

暗く、重たく、やるせないとしか言いようのない作品ですが、不思議と後味は悪くなく、わたしにとっては心に残る一作でした。

私たちの幸せな時間 Book 私たちの幸せな時間

著者:孔 枝泳
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コメント

reiさん こんばんは~☆

ギャーー!!(相変わらずうるさい?)
『私たちの幸せな時間』 来週実家の前の映画館に観にイク予定です。
で、こ・・・このレビューは読むの止めときますわ。
頭まっさらで観て素直に泣きたいから・・・

明日『ヘアースプレー』 イキま~す。^^

投稿: のりじょん | 2007年11月 6日 (火) 20時14分

のりじょんさん
ごめんごめんm(--)m
冒頭にネタばれ警告イレるの忘れたわ。
ちょっくら今から書き直してきます。

ハンカチ、お上品なのではだめよ、タオルハンカチいりますから、ね。

投稿: れいち | 2007年11月 6日 (火) 20時26分

すんません、見る予定ではおりますが、
未見ですう~~
(翻訳の蓮池さんのブログも興味深いですよ)

へへっ・・私ぜんぜんネタばれ平気なんだなあ。
特異体質か?

投稿: miyuki | 2007年11月 6日 (火) 20時46分

miyukiさん
わたしの書く拙い感想文ですから、故意か偶然か核心はハズしているかもしれません、ふふ。

ラストシーンは韓国映画特有のこれでもかっ的描写です。
洋画『グリーンマイル』や邦画『十三階段』より強烈、目を覆いたくなります。

蓮池さんのブログはmiyjkiさんとこで紹介されていたんですね、以前チラッと見せていただきましたが改めてこちらにも貼っときます。
http://www.shinchosha.co.jp/topics/hasuike/blog/

ユンスのような犯罪者を生む背景には、韓国の孤児事情が大きく影響していると想像できますが、それを調べだしたらどこまでが真実かわからなくなりました。
ドラマによく出てくる孤児、現実なんですね。
まだまだ知らないことがいっぱいの近くて遠いお隣さんです。

投稿: れいち | 2007年11月 6日 (火) 21時47分

この映画、私んとこじゃどこもやってない。『ヘアースプレー』ならやってるけど。泣ける映画最近見てないなあ。ドラマや映画見て泣いたのはう~ん『1リットルの涙』かなあ(毎回ティッシュ抱えて見てた)

私が最近、久々に見た映画は『クローズZERO』で、その前は『キサラギ』だったし、涙とは無縁のものばかりだわ。

映画は見れそうにないのでちょっと落ち着いてこの本読んでみようかなあ(今読んでるのは綾小路きみまろ)

投稿: みどちん | 2007年11月 7日 (水) 22時32分

みどちんさん
そうなんです、この映画はあまりメジャーなところでは上映していないかもしれません。
そちらでは“フォルツァ総曲輪”というところでやっているようです。
華やかなキャストで、交通事故や記憶喪失、出生の秘密などを織り込んだストーリーが持てはやされがちな韓国映画・ドラマですが、こういうじっくり味わうものにもいいものがたくさんあります。
監督さんたちはみんなまだ若く、とっても勢いがある韓国映画界です。
これはそのうちDVDで出てきますから、本を読んだあとはレンタルでもよろしいのでは?
実はわたしも原作とっても読んでみたいんです。

『1リットルの涙』
わたしも見ましたよ、あの頃はエリカさまもかわいかったですね、笑。
原作も読みました、原作はぼろぼろ泣けるというよりとっても厳しい現実とお母さんの頑張りに胸を打たれた覚えがあります。
みどちんさんはよく映画ご覧になりますねぇ。
しかも古いのにも精通してらっしゃって、mojoさんとええ勝負できるんじゃ・・・!?

投稿: れいち | 2007年11月 8日 (木) 00時25分

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投稿: みんな の プロフィール | 2007年11月 8日 (木) 07時58分

カン・ドンウォンくんて、
マニアックで熱烈な人気が一部にあるようですね。
丸くなったり細くなったりしゃっきりしたり(笑)
このお子もちょっと変幻自在?
兵役を控えて、微妙なキモチもあるようです。
たいへんだなあ。

で、miyukiの好きなウォンビンくんとはとても
仲が良いようです。
頑固さかげんが共通してるのかもしれません。
部屋が散らかっているのをもうひとりの親友のチョ・ハンソンくんにぷち非難されていましたが、「わざとそうしている」とインタビューに答えているのを見て、こいつB男め・・・と思いましたわ。ふふふ。(ハンソンくんは苦労性のA男だわ。)

そういやあ、ナヨンちゃんもB女。
撮影中はどんな会話していたんでしょうねえ。

夕べはものすごい詳細な④様の夢を見てしまいましたわ。
なじぇ?と思いましたが、
多分帰りの電車で隣に座っていた、若いのに厚化粧で
豹柄なおねえちゃんが、携帯に④様ストラップ下げていたのを見たせいかも・・・・^^;

投稿: miyuki | 2007年11月 8日 (木) 14時23分

映画が観たい!!
うーん、↓のおデブちゃんたちも観たいし、これも捨てがたい。
どーするべきか??

投稿: 湖知流 | 2007年11月 8日 (木) 16時32分

ていうか、この映画、どこで観たのぉぉ??

投稿: 湖知流 | 2007年11月 8日 (木) 16時44分

miyukiさん
ドンウォンくんとヒョンビンくん、さらにハンソンくん・・・
うわぁ、豪華!!
みんなモデル出身で身長が180cm余裕で超えてるんですよね。
3人で何して遊ぶんかなぁ・・・。

B型ナヨン嬢、迫真の演技でとってもひきつけられました。この人きれいで知的でつんとすましたあたり、将来ミスクさんを超えるんじゃないかと密かに応援することに決めました。
真似して前髪少し短めに切ったら、そこはほれ一般人。お笑い芸人みたくなってしまった、とほほ。
ナヨン嬢とドンウォンくん、なかなかお似合いのふたりです。

ロッテのヨン様、ヨン様のロッテ・・・当たらんかなぁ・・・。

投稿: れいち | 2007年11月 9日 (金) 01時32分

湖知流さん
ケーキの食べ歩きに読書にと忙しいお方!!
秋ですねぇ、映画館いきたくなりますよねぇ。
この映画、この夏ころからひっそりと上映されてすでに終わったところが多いようです。

http://www.rcsmovie.co.jp/shiga/

こちらのページの一番下の近日上映予定のところで確認してください。
12月14日(金)から上映の予定とあります。ここは質のいい作品を上映しているのに、HPがわかりにくいのが難点です。
晴れやかな宣伝のシネコンが台頭して押され気味の中、ぜひがんばってほしいです。

投稿: れいち | 2007年11月 9日 (金) 02時07分

私もネタバレが平気な特異体質です。バラされた直後から内容を忘れられる脳ミソの持ち主なもんで…(“体質”じゃないか…^^;;)

この映画、テーマは軽くないのに後味は悪くない。これ、ユンスが「凶悪犯」ではなく「道を間違えちゃった不幸な兄ちゃん」だから、憎みきれないのかなあと思ってみたり、二人の面会を見守る看守さんがアボジっぽくてほのぼのしちゃったりしたからかなあと思っています。
メッセージは確かに泣けます。

強いていちゃもんを付けるとしたら、ユンスがあっさり改心したように思えるところでしょうか?気付いたら改心したいいヤツになっていました。物足りない…。

投稿: 飼い主 | 2007年11月 9日 (金) 13時52分

“フォルツァ総曲輪”ここで見ることができるんですか。れいちさんのほうが富山に詳しいかも知れませんね。総曲輪フェリオという再開発ビルが9月にオープンしたんですけどフォルツァも相乗効果を期待してたようなんですが、新しいビルに吸い取られたようで苦戦らしいです。

「小さな映画会社が製作する単館系映画を中心にしている」ということで、私はこういう映画館に是非とも頑張ってほしいんですけどね。

ただ、ここからだとちょ~っと遠いのがタマニキズ。

投稿: みどちん | 2007年11月 9日 (金) 21時35分

飼い主さん
そうですねぇ・・・
看守役のおっちゃん、よく刑事ものに出てきますし、シスターのおばちゃん芸達者でしみじみしましたねぇ。

>ユンスがあっさり改心したように思えるところ・・・
<限られた時間の中でそこらへんの描写をこってり描くことが困難だったのでしょうか。

わたしのつっこみどころも聞いてください。
それはユンスが人の罪を半分かぶったところです。
このふたりはお互いの中に醜いところとか弱いところとかを見つけて、それが自分とよく似ているからこそ惹かれてしまったんだと思うんです。ユジョンがユンスの判決を覆そうとする時点で、ユンスだけを見ていたユジョンの気持ちがちょっと違う方向へ向いたというか、見ている側の緊張がふっと途切れてしまいました。
そこから怒涛のラストへ向かいましたから、自然と引き戻されましたけどね。

この重たいテーマに、こんなスタイリッシュなふたりを持ってくるとは・・・ずるい!でした。

投稿: れいち | 2007年11月 9日 (金) 22時34分

みどちんさん
ごめんなさい、すみません。
もう一度確認してきましたら“フォルツァ総曲輪”での上映は終わってしまったようで、DVDが出るのをお待ちいただくしかないようです。

>小さな映画会社が製作する単館系映画を中心にしている・・・
<ほんと、こちらでもこういう劇場は苦戦しています。宣伝費もかけられないようで、せっかくのいい映画なのに広く知られることなく、いつのまにか終わった・・・って。
シネコンのない時代、ずいぶんお世話になったものですのに、薄情でごめんねって思っています。

投稿: れいち | 2007年11月 9日 (金) 22時46分

reiさん こんにちは
観てきました。レディースデーだと言うのに、れでぃ
4人、おっさん1人計5人のお客さん。^_^;
・・・大丈夫なんだろうか。。

ごっついタオルハンカチ持ってイッたけど、要らんかったみたい。^^;

カンドンくん(ユンス)、綺麗すぎるわ~ ええ子すぎるわ~ こんな死刑囚おらんやろ~~
なんか、どうもいま一つ現実味がなくて感情移入できなかったです。
あ、あの写真に書き込まれたメッセージ・・・
アレだけはさすがに泣けましたが。

ラストのこれでもかっ的シーンも、ふと同じようなシーンがあったことを思い出したんですが、
『砂時計』のミンスssi・・・上手かったです。死への恐怖心がひしひしと伝わってきたっけ。。

もう一つ気が散った?理由。それはユジョンの兄さん役の俳優さん、
どこかで見たぞ、何に出てたっけ?とず~っと考えながら見てたから。(あほ)
ようやくラスト近くで、『ローズマリー』のドクターやったと気付きました。

カンドンくん、ほんまに吸い込まれそうなお目目やね~@@

投稿: のりじょん | 2007年11月14日 (水) 17時13分

のりじょんさん
ご覧になりましたか!?
え~~~!?
泣けんかった?
人それぞれ『ツボ』は違うってことですね。

わたしはユンスの生い立ちからして泣けましたのよ。
母ちゃん、あんまりやん。
ユンスに弟の世話まで押し付けて・・・弟死んでしもたやん。
社会の隅で犯罪者に堕ちていくストリートチルドレン・・・『ごめん愛してる』のMr.チャーとかぶりました。
すみません『砂時計』『ローズマリー』は未見ですので語れません。

きょうはゆっくり『魔王』を見ようと思っていたのですが、相方が「紅葉見に行こう」というもんでお付き合いしてきました、は~~~。

投稿: れいち | 2007年11月14日 (水) 18時53分

reiさん ふたたび。

>・・・弟死んでしもたやん。
この弟もね。『ローズマリー』でスンウ兄のお子やったんですわ。も~めっちゃ可愛いてねぇ~
んがこの弟クン、こんな可哀想な演技もできるやなんて・・・って泣けるより、この子凄いなぁ!って感心しきりな私でした。

>相方が「紅葉見に行こう」というもんでお付き合いしてきました、は~~~。
ふふ。は~~~。と言いながら、まんざらでもない?
ごっつぉさんで~~す♪^^

投稿: のりじょん | 2007年11月14日 (水) 19時16分

のりじょんさん
やはりB女です、着眼点が違う!!
わたしは韓流にはまりだしてから簡単につ~~~っと涙が出ますの。
こどもの演技には特に。
ロマンスより、家族の情を描いたものはあきまへん。
別れ別れになってた姉妹、親子の再会シーンなんて“来るぞ来るぞ・・”ってわかっていてもだ~~~っ(ToT)
へへっ、泣きたいんだけどね。

うちのB男くんはこないだ『続3丁目の夕日』を見て泣いて帰ってきました。
この人の『ツボ』もわからんときがあるんですわ。

>まんざらでもない?ごっつぉさんで~~す♪^^
<うふふ・・今夜もばっこんばっこんさ!(なんやねん、それ)

投稿: れいち | 2007年11月14日 (水) 21時22分

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